『午前3時の子どもたち』全日程 無事終了!
<『午前3時の子どもたち』あらすじ>
<座談会 『午前3時の子どもたち』制作の裏側>
参加者:女の子には内緒主宰:柳生二千翔、映像撮影・協力:黒木晃、美術:金子恵美、宣伝美術:内田圭
金七:よろしくお願いします。
今日は、柳生くんだけではなく、制作に携わった皆さんのことについてもお聞きできればと考えています。
まず、金子さんは美術というクレジットでしたが、いろいろお仕事を受け持っていましたよね?
金子:はい。最初、お話を頂いた時は「映像も撮りたいから、そのセットを中心に」ということだったんですが、最終的には照明と衣裳もやるようになりました。
でもそれは私が口出しをしてしまったので・・・衣裳は、もともと係がいなかったんですが、美術と関係があったので私が担当しました。
照明は、もとから少し勉強はしていたんですが「金子よろしく」と言われて、はい、わかりましたと。
黒木:金子さん、ミトンとか手作りしてましたよね。
金子:劇中の夫婦の部屋を作るというときに、柳生くんからどういうイメージなのか2~3しか言葉をもらってなくて、他は私の妄想で作り上げたんです。
私の妄想の中で、女性の役者さんがお母さんのようなイメージがあったので、「この人だったら手作りの物を使いたいだろうな」と思って徹夜でミトンを縫いました。役者さんの演技しやすい空間を作ろうと思っていたので、そういう細かいところや見えないところに手がこんでしまったのかな、と思います。
金七:柳生くんは、あまり口出ししなかったようですが、金子さんにもとから丸投げしようとしたんですか?
柳生:意識はしていなかったんですが、そうなっていましたね。
戯曲という形は出来ている段階で、それから金子さんが何を作るのか見たいな、と思いましたね。結果的に、すごいよかったです。
僕がお願いしたことがふわっとしていたんですが、金子さんなら変なものを作らない、という信頼があったので。
黒木:キッチンの小道具も、「自分の家が近いから」って私物を持ってきたりしていましたね。
金子:家出少女と間違えられて、職務質問されました。
金七:え、あれ、私物もあったんですね・・・!話を移します。内田さんにチラシをお願いするのはいつ決まったんですか?
内田:昨年のドリフターズ・サマースクールのあとに、「女の子には内緒」のロゴを作ることは決まっていて、そこから自然な流れでチラシも作ることになりました。
金七:あのチラシのイメージはどのように決めて行ったんですか?
内田:チラシを作り始めた時期、内容は映像を使うことが決まっているだけの段階だったんです。
なので、柳生くんとは1度だけ、どういったフライヤーが好みなのか話をしました。
あとは、僕の方から「こういうふうにします」と話を進めていきました。チラシは、かなり苦戦しましたね。
金七:黒木さんは、以前の対談のときにはまだ映像を撮っていない段階でしたね。
全部撮るのはどれ位かかったんですか?
黒木:撮ったのはそんなに量は無いんですね。撮影も8月下旬だったので、それまでにどういうふうに撮るのか、を考えるのかが大変でした。
今の演出が「一方は予定調和で、もうそれに片方は抗っている」というコンセプトにあっているのか、といったことをずっと聞いてました。
自分の関わり方との問題になるんですが、柳生くんが公演をやりたいと言ってスタートしたので、僕らはサポートするのかなと思っていたんです。
だけど、なかなか全体が進まないから、「柳生くん何したいの?」という感じになりつつあったんです。「今はよくわからないけど、あとになったらものすごく面白くなるのかもしれない」と思って、こちらか意見を言うのを飲み込んでしまっていたんですね。稽古も後半になって役者さん側から柳生くんに意見を言ってくれたりするようになりました。そこからよくなったと思います。それを早い段階でやってもよかったのかな。
内田:様子を見ている期間が長くなってしまいましたね。
柳生:皆さんが意見をくれるようになって、僕の頭もグルグル回るようになりました。
それまで頭の中だけで凝り固まっていましたが、色んな人から意見をもらえて、必要のないこだわりとかも捨てられて、やっと頭の中の整理が付くようになりました。
金七:黒木さんと色々お話をしているとき、柳生くん自身はどんな感じの状況だったんでしょうか?
柳生:単純に、僕の中でどう制作を進めればいいのかスケジュール感覚が無くて、どの程度で焦れば良いのかのさじ加減が分からなかったんです。
その中で、自分のこだわりもあって、どの程度皆に投げていいのか、わからなかった状態で、自己完結の中で収まっていました。ある意味、スタッフのひとたちを信頼しきれなかったのかな、という部分はあります。
金七:金子さんと内田さんは稽古の段階ではどういったスタンスだったんでしょうか。
内田:僕は内容とは離れていた場所にいたんですが、黒木さんが言っていたタイミングから、確かに集団でモノづくりをしている感じはしましたね。
金子:私もそういった部分は黒木さんを信頼しきっていました。「ずっと稽古を見ているわけじゃない私からは言えないな」と思って、柳生くんのイメージを具現化することを目標にしていました。
金七:皆さんはドリフターズ・サマースクールの受講生・関係者として柳生くんと出会ったわけですよね。それが、今回は柳生くんを中心に作品を作りました。何か印象が変わった点などありますか。
内田:僕たちは全然、柳生くんの作品を見たことがこれまで無かったんですね。今回、やっと、作家としての柳生くんが理解できた気がしました。
柳生くんは普段も戯曲内でも、自分の考えていることを表に出すのが下手だから、こちらから踏み込まないといけないんだということがわかりました。次やったら、もう少し分かり合える気がします。
金七:DRIFTERS SUMMER SCHOOL ADVANCEというものはどう感じましたか?
柳生:コンセプトを書いて、企画書を書くというのは、いい訓練になりました。実は、「小さな足掻きが世界を変える」というコンセプトで最初は明るい話を書こうとしたのを、途中でやめたんです。そこでコンセプトも変更しようかなと思ったんですけど、自分が何を言いたいのかを洗い出したんです。構造・構築をどう見極めるか、というのを出来たのは良かったと思います。僕みたいなペーペーに対して、お客さんが沢山来てくれて、バックアップがあるとありがたいなと思いました。
<『午前3時の子どもたち』プロデューサー、兵藤茉衣さんのコメント>
DRIFTERS SUMMER SCHOOL ADVANCEで応募してもらった、女の子には内緒『ゆかりのこと』(後の『午前3時の子どもたち』)の企画書は、なんだかよく分からんけど作るゾ!という気概に溢れていました。サマースクールで受講生の時には隠れていた柳生くんの野心が顔を出している!と、純粋に興奮したのを覚えています。
柳生くんが最初から最後まで貫いていた「小さな足掻きが世界を変える」というメッセージが、この作品の一体どこにあるのか?俳優やスタッフも一緒になって柳生くんに問いかけ続け、意見がぶつかり合う中で稽古もすすみ、作品も無事上演できたけど、ぼんやりと「これで良かったのかな」という空気感が残ってしまいました。プロデューサーとして、もっと柳生くんの野心を引き出せていればと悔やまれます。
しかし、公演2週間後、柳生くんの恩師である山城大督さんと3人で公演を振り返る機会があったのですが、そこで「まだ分からんけど、これからもボクは作り続けます!」と言った柳生くんは、公演前とは比べ物にならないほど、むき出しでヒリヒリするくらい輝いていて、「これで良かったのかな」という空気に呑まれて少し立ち止まっていた私は、悔しくてチョット泣いてしまいました。
兵藤茉衣
旗揚げ公演を無事に終えた「女の子には内緒」。まだまだ荒削りな部分が多々ありますが、今後の活躍にご期待下さい。次回公演は、春を予定。タイトルは『人魚はお砂糖しか食べられない(仮)』です。
女の子には内緒 公式ウェブサイト→http://niha-naisho.info/index.html
writer profile
1992年生まれ 後楽園⇔神楽坂他 ドリフターズ・マガジン編集長