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ドリフターズ・サマースクール2013 プレレクチャー第3回 入学説明&相談会

6月22日、サマースクールのクリエーション場所となる森下スタジオにて、ドリフターズ・サマースクール2013の入学説明会&相談会が開かれた。ドリフターズ・インターナショナル理事でありスクールプランナーの金森、藤原、中村と、今年の監督講師である篠田千明がタイからスカイプで参加。説明会参加者に向け、今年のサマースクールの特徴、今までのサマースクールについて話をした。
 

 

 

 

 

篠田:こんにちは、篠田です。よろしくお願いします!今年のドリフのサマースクールで監修と最終的な発表するものの演出、全体の管理をします。

自己紹介しますね。去年の9月まで快快(FAIFAI)というチームで、今はソロやひきつづき快快(FAIFAI)の前の作品をやる時は演出をしています。

最近は、バンコクのナンロンというスラム街で、都市型スラムの再構築をきっかけにしたワークショップをやっていました。このエリアには昔から旅芸人の一族が住んでいて、家族で代々口承で伝わっていったものが、遂にここ何年かで跡を継ぐのも1人になっていて、それのリサーチなどをしています。

サマースクールでは、その話からレクチャーをしたいと思っています。私が演劇としてとらえているものは広く、「言葉」からレクチャーを進めていきたいです。まずは「言葉」を定義しなおす所からはじめたいです。

 

藤原:去年まではファッションコース、空間建築コース、ダンスコース、宣伝・制作コースの4つに分かれていたんです。そして、ダンス公演を作ると最初から決めていて、昨年の講師はNibrollというダンスカンパニーを主催している矢内原美邦さん、その前は山田うんさん、1年目は康本雅子さん、と若手の振付師ダンサーを毎年お呼びしていました。ダンスを踊りたい人、建築をやりたい人、ファッションをやりたい人など、欲望をミックスして作品を作る、ということを毎年やってきたのですが、今年は、ガラリと変えて、こちらの篠田さんが監督講師になります。

 

今年のサマースクールをどうしようか考えた時、毎年すごくうまくいくし面白かったんですけど、でも僕たちの求めている実験性というのが足りないなと感じました。取り組み自体はいろんなプロフェッショナルの人が集まるから面白いし議論も白熱するのに、出来あがった作品は実験性に欠ける、という不思議なことがおきていたんですね。きっとその原因は、最初から劇場を公演発表の場として抑えていて、この場所でダンスをやると決めてしまっているからなのではないのかと反省し、今年はアウトプットを定めないことにしました。それが今年の大きな特徴です。いろんなジャンルの講師が集まるように工夫しています。

次に、篠田さん以外の講師の方々を紹介していきます。

 

金森:今年はコースがないので、みんなでいろんな講師の話を聞くことになります。今回ファッションの分野からは、spoken words projectというブランドをやっていらっしゃるファッションデザイナーの飛田正浩さん、 textile×design notes さんという3人組もお招きしました。メンバーは奥田染工場というプリントの工場を代々やっていらっしゃる奥田博伸さん、テキスタイルデザイナーの近藤正嗣さん(hachibunno5)、シミズダニヤスノブさん(JUBILEE)です。彼らはシルクスクリーンを、工場ではなくても色んな場所で出来るようにするマシーンやテクニックを持ち込んでくださいます。そのシルクスクリーンの技術と、飛田さんが一緒になって教えていただくことで、ファッション的なことはもちろんですが、木、板、紙などにも転写できるプリントの技術を活用していいけるといいなと思っています。ファッション/テキスタイルの分野からお招きする皆さんですが、そういった枠をこえて、いろんなものに即座にプリントしていくといったことをテーマに、何か作品づくりをできたらいいなと思っています。

 

 

藤原:次に、スぺースデザイナーの佐々木文美さん。佐々木文美さんは、篠田さんが所属していた快快(FAIFAI)のチームで舞台美術をされている方です。快快(FAIFAI)の作品以外でも2年ぐらい前から、さまざまな分野で活躍している方で、非常に面白く魅力的な人です。快快(FAIFAI)は、いままで見た事もないような開放感や、権力からの自由を感じられる、僕も非常に好きなチームです。そのセンスを支えているのが佐々木さんと篠田さんなので、今年のサマースクールは概念から自由なものが生まれたらいいなと思い、佐々木さんにも来てもらう事にしました。

飛田さんと佐々木さんがいれば、おそらくその場で考えてモリモリ作るという感じになるのではないかと予想しています。

 

また、今年は講師に、石川初さん(ランドスケープデザイナー)と菅俊一さん(研究者・映像作家)をお呼びしたのがかなり特徴的だと思います。

 石川さんはランドスケープデザイナーという、建築のジャンルというよりは、より学者的、研究者的な立場の方です。趣味として、GPSロガーという機械で自分のGPSログを10年前から取り続けている方です。

団地マニアで本を執筆している大山顕さんと組んで、GPSである決まった軌道を歩くと、それが豚の絵になるというアートをやったりしています。また、早稲田大学で地形を移動する体験をどのように記録できるかを授業で教えています。移動の記録から何かものをとらえるという授業を担当してもらうことになりました。

 

菅俊一さんは映像作家の方です。

今回のサマースクールは「移動」いうテーマをかなり早い段階で決めていました。これはドリフが漂流するという意味であり、文化を越境すること、移動することを大事にしているので「移動」にしたんです。菅さんはブログでA地点からB地点まで移動する、という内容で気づいたことを自身のブログで掲載されていたんですね。それで、何かつながるものを管さんは持っているな、と思いましたし、本当に面白い人なのでお願いしました。

 

あと、藤原と宮村ヤスヲさん。宮村さんはグラフィックデザイナーで、去年からドリフターズ・インターナショナルの理事になられた方です。

藤原、篠田、宮村はわりといつもいます。他の先生は時々いろんなミックスで来ます。常時いる講師と、その日にくる講師の組み合わせで、授業の構成も日々変化していきます。

「移動」という軸で探していくと、いろんな試みをしている方がいて、そういう面白い方を沢山呼んで単発のレクチャーもしていきたいと思っています。

 

 

<過去のサマースクール>

藤原:1年目は、ゲスト講師、気象予報士の森田正光さんのレクチャーから、公演名は「アンバランス色素ルーシー」にしました。公演会場はヨコハマ創造都市センター(YCC)でした。

この年はLEVI’SというジーンズブランドのFOREVER BLUEという世界的なアート支援イベントの支援対象としてサマースクールが選ばれて、大量の中古のジーンズをもらえました。ジーンズという素材は、ファッションコースも建築コースもやりにくく、非常に苦戦したんですが、ファッションコースの人がジーンズを繊維まで分解し、リサーチをしてきて、それがすごく面白かったです。このテクニックで何か作れないかという疑問がそこから生まれ、またそこから空間美術が決まるという横断的なことが起きた年です。

 

藤原: 2年目は、発表はKAAT 神奈川芸術劇場でした。

この年はファッションコースに面白い人がいて、初日に敬語禁止と言い始めたんです。そのおかげで、スタートからコミュニケーションがフラットになってとてもよかったです。

そのほか、ノーディレクションがテーマになって、ディレクターを設置しない難しさと面白さがストレートにそのまま出ましたね。作品を観て怒っているお客さんもいたのですが、すごく開放的な作品ができてよかったです。

 

中村:ノーディレクションになるまでのプロセスが面白かったです。そうなったのは、ディレクターがいらない、といった子がいたからなんですね。「誰もがディレクターになれる。だから、何かものを作るとき、ヒエラルキーの中でものを作るのはおかしい。もっとフラットな環境で作品作りができないのか」という問いかけをした子がいて、じゃあ、その中で何ができるのか考えたらいいんじゃないか、ということで作品を作りましたね。これは、我々もドキっとするような問いでした。

そういうふうに、毎年サマースクールならではのプロセスが生まれますね。劇場という場でお客さんに向けて発表するので、受講生の中では自分の信じてきた価値観、美意識を捨てきれないという葛藤も生じている子もいましたが、葛藤が生まれ、自分とは違う価値観にさらされた時、もっと大きな価値観を自分で発見してほしいと思います。

 

藤原: 3年目は 公演の発表を、横浜の象の鼻テラスで行った年です。場所自体が劇場でないので、きちんとリサーチをし、実感をもちながら進めました。なんでもできるという空間だったため、空間建築コースは大変でしたが、着々と楽しそうにやっていました。

また、ナカダイさんという独特な産廃業者さんから、資材のご協力をいただきました。あと去年はクリエーションテーマを初めからつけていたのも特徴です。前の年に、ノーディレクションで、タイトルなしでやったので、逆にタイトルをつけたらどうなるのかという実験をしてみました。ただ、コンセプトをまとめていくのが大変でしたね。

 

中村:  団結力も高かった年ですね。ファッションコースはキルトダンスというブランドを作ったり、ダンスコースでも千駄木ダンスというユニットを立ち上げたり、今でも活動している人が多いです。そういう関係って本当に魅力的で、サマースクールの良い所だと思います。通常、なかなかダンスの人と建築の人が、ガチでモノをつくったりしないので、みんなにとって新しい発見などがあったりするのは誇らしいです。

 

 

 

<今年のサマースクールについて 「ものがたり」>

篠田: 自分は演劇出身なのですが、違う分野の人と何かをやるためには、要は「言葉」が大事ですよね。その翻訳のツールとして、「移動」だけでなく「ものがたり」をいれたい。

参加する受講生と一緒に、最終的に発表するものにどういう「ものがたり」を入れたいかをみんなで考えて、その「ものがたり」を実現するためにはどういう風に動いたらいいだろうか、その移動した先に見える「ものがたり」とは何かを考えていきたいです。

単純にいえば、伝統芸能では、なぜ型が必要なのかなど、設定されている条件をなにげなくみんなで承認するという作業を、より早くより見えやすくするという作業とかしてみたいですね。

私が旅行の添乗員をやっていたとき、お客さんにバスを探してもらうには、バスの色や色の付いた旗だけでなく、大きめのマスコットを旗につけて、キャラクターを探してもらったほうが早かったんですね。これは固形、色なんですけど、限定された空間の中のために言語、「言葉」というのを型にするってことでもいい。たとえば、服に記憶をもつ、というアプローチで、私は違う分野であるファッションに対して「ものがたり」を作れると思います。

 

あと、「母さん助けて詐欺」に名称が変わった「おれおれ詐欺」が最近気になっているんです。いかに相手に電話で話を聞いているという状態から、封筒を見知らぬ他人に渡すという非常に能動的な行為に引き込むか、というシナリオと展開、しかも何役もでてきたりして、そのタイミングが職人芸的ですよね。みんなで詐欺のシナリオ作ってみたら面白いと思ってます。

 

中村:「ものがたり」を、みんなと共有するためのファクターとして機能させようとしているのがすごくわかりやすいなと思いました。これまでのサマースクールでは、ファッションと建築は、形、かっこいい、とかそういうものを追究しがちだったんですが、そういうのって個人の美意識じゃないですか。その個人の美意識を超えて、アイディアを出し合うといったとき、何か核になるものが必要なんですよね。その核を「ものがたり」の中で見つけてみる、というのはすごくナイスなアイディアだと思いました。

 

藤原: 世代を超えて残るということは人間の文化のすごいことですよね。「ものがたり」もすごく長期間残っているし、建築もそう。それは、かっこいいから残っているのでなく、残るための型、構えがあるから残っていると最近思っています。そういう視点からみると、「ものがたり」も残るので、篠田さんの話はおもしろいです。

 

<さいごに>

藤原:日本人の特徴として、何かをする時に「上手にやろう」と考えすぎだと、大学で学生たちを見ていて思います。それが習慣になっていて、誉められたいなどといった感情に頭が束縛されている。もっと、「問題をつくる

ことを実践するべきですね。なので、あまり上手にやろうとしないのがサマースクールの良い所だと思います。

 

中村:若い時って「世代を超えろ」と言われたり、「今あるものだけじゃつまらないなー」とか思うじゃないですか。そういう時に違う分野、違うボキャブラリー、違うメソッドに出会う、というのはすごく重要なことだと思っています。そこから自分のクリエーションを考えていけると思います。

今回のサマースクールは過激なフォーメーションですけど、そういう所に興味をもってくれる人にこそ出会いたいと思っています。体験してわかることがある。それは必ず自分のクリエーションにフィートバックするので、今まだわからないことはわからないままでいい。「ものがたり」という時間軸で、その先におきる事件などを考えられたら面白くなりそうですね。

 

藤原:  過去3年でたくさんの卒業生を輩出しましたが、サマースクールが良い学校だなと思うのは、活躍している卒業生が多いことです。建築のコンペティションで入賞する人がいたり、ダンス公演を卒業生で作ったりしています。参加して分野の越えた知り合いができることで、自分のやりたいことを実現しやすくなったりします。

今年もぜひ応募して下さればと思います。よろしくお願いします!

 

 

<参加者からの質問>

Q. 火曜日に授業があるが、何時頃から始まるのでしょうか。

A.夕方3時からは8時ごろとしています。この時間帯のどこで授業を行うかはあまり決まっていないです。

 

Q.授業形式はどのような感じなんですか?

A.いつもいるのは藤原、篠田、宮村の3人です。

ほかの講師は、専門家のため、課題を出していく形式を考えています。

宿題もちより形式と、その日その場で何かやってみる形式を織り交ぜていきたいです。

 

Q.受講料はいつ払えばいいのでしょうか?

A.基本的に初回の授業に払ってもらいます。

 

Q. 学校がある場合は途中からでもOKですか?

A.授業は、平日しか来られない、土日にしか来られない講師がいるため、平日と週末という、このようなスケジュールにしました。自分のスケジュールに合わせて来てください。途中からでも、もちろんOKです。

 

 

Q.参加できない期間がある場合は?

A.基本は参加ですが、事前に自分が来れないとわかっていれば、それまでに自分で準備していれば大丈夫!積極的に自分の時間を使いましょう。

 

Q.サマースクールの応募者が定員の25人をオーバーした場合は?

A.講師の飛田さんが、「早い者勝ちです!」っておっしゃっていました。情報を他人よりも早くキャッチするのが大切だから、と言っていました。

去年までは定員オーバーの場合、セレクションがありました。そうなると、志望動機理由が大事になってきますよ。志望動機理由はしっかり読んでいます。

 

Q.志望動機理由には何を書けばよいのでしょう?

 A.自己アピールでも、モチベーションなど、なんでもOKです。読んで魅了されるようなものがいいですね。

 

Q.ドロップアウトする人はいるのか?

A.毎年フェードアウトする人が1~2名います。でも、それじゃあ影響を残せないので面白くないですよね。つまらなかったら、つまらないとはっきり言えばいいと思います!そこから、面白くなるようにどんどん変えていきましょう。

 

Q.作品は劇をつくるということですか?

A.まだ分からないです。「何かを発表する」としか決めていないんです。最後どういうアウトプットにするのかは皆でアイディアを出し合い、いいものをみつけてそれを発表形式にしてください。つまりなんでもできます!

制限のある自由は難しいけど、それを楽しんでほしい。そういう自由を手にいれた時、どういう自分に成長できるのかを、サマースクールで体験してほしいです。

 

 

※ドリフターズ・サマースクールの詳細・応募はこちらからどうぞ

writer profile

樫村有紀 (かしむら ゆき)

1993年生まれ 上智大学在学中