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2012年 私のベスト1

2012年を振り返ると、どんなことが心に残っているだろう・・・。様々な表現の分野で活躍する人に聞いてみました。回答は、演劇や、本、自分の身の回りに起きたことや、社会的な事件など、いろいろなものが集まりました。 お名前、心に残っているもの、心に残った理由の順で掲載しています。
 

 

 

 

 

 

安藤僚子(デザインムジカ)

 

川内倫子展「照度 あめつち 影を見る」

2012年5月12日 ( 土 ) ~ 7月16日 ( 月・祝 )

東京都写真美術館(http://syabi.com/contents/exhibition/index-1593.html)

 

今年は食わず嫌いなものを観に行って逆に感動させられた1年だった。快快(KAFE9「りんご」)とか、飴屋法水(国東半島アートツアー「いりくちでくち」)とか。そんな中の1つが川内倫子の写真展「照度 あめつち 影を見る」。他人の私的な日常光景の断片を見てもなあ、と写真に対して苦手意識があったが、完全にそんな思いは払拭させられ感動のあまり2回観に行った。
2枚1組みの構成で展示されている断片。写真をとっている時に同じタイミングでカメラを回していた映像の断片。20枚繋いだコンタクトシートの中に写っている無意識な並びの断片。写真家が日常生活の中からどれだけ膨大な断片を切り取り、選び、構成しているのかという途方もない作業を知り胸が震えたのだ。

 

インテリアデザイナー(http://designmusica.com)

 

 

玉井健太郎

 

「coco-ten」

11月14日(水)〜11月25日(日)

旧東京電機大学校舎11号館 8階(TRANS ARTS TOKYO)

http://coromo.jp/clip/cocoten-2012 http://www.kanda-tat.com/

 

 

今年というよりは、ここ数ヶ月で一番心に残っている出来事として選ばせて頂きました。

 また自分も関係者なので、あげて良いのかが分かりませんが単純にとても純粋で生真面目で力強いプレゼンテーションで自分の心を最も揺れ動かしてくれた展示会でした。

 

ASEEDONCLOUD デザイナー(http://kentarotamai.com/)

 

 

蓮沼執太

 

志賀理江子展 「螺旋海岸」

2012年11月7日[水]~2013年1月14日[月]

せんだいメディアテーク6階 ギャラリー4200(http://www.smt.jp/rasenkaigan/)

 

ここではただ単純に今年一番僕に響いた展覧会を観た感想や批評を書くのではなくて、その前後の僕自身の行動を中心に記述してみます。

11月16日から19日のことです。青森の南郷という地域でパフォーマンスグループ・KATHYの舞台公演音楽と音響オペレーションを担当していました。その公演後、青森市にある国際芸術センター青森(ACAC)のレジデンスに宿泊し、『Storyteller』という企画展を観ました。そこでは出展作家の青山悟さん、北川貴好さん、ユ・チュンタさんとガイド付きで展示案内をしていただきました。公募展とは思えないほどの作家個人の技巧やコンセプトの統一感もあり素晴らしい展覧会でした。

そして僕らは途中で合流した友人のアーティストの志村信裕くんらと共に仙台へ向かいました。青森でも初雪が降ったほど東北は寒く、いよいよ冬がはじまるなあ、といった空気感を持っていて、仙台に着いてもそれは同じでした。せんだいメディアテークは全体がガラスで覆われた建築物であり、当然展示スペースも同じ構造です。日中は日差しがさし、夜に向けて徐々に日の入り方が変化していき、次第に闇に包まれます。

事前にACACのキュレーター服部浩之さんから伺っていたのは、まさにこの自然現象のことで、昼間と夕方とでは作品の見え方が全然違うことでした。僕らが仙台に着いたのはもう夕刻。まだギリギリ日中のような日差しが入る時間帯から夜にかけて暗くなる間でした。

エレベーターに乗り、展示階に到着し、ドアが開いた瞬間に圧巻が始まりました。あらゆる芸術の体験の中で、この圧巻が持続するドローンのような体験というのは、音楽公演などでは稀にあるのですが、美術展では本当に久しぶりの感覚を受けました。

僕自身も志賀理江子さんが行ってきている宮城県北釜地区での活動、そして震災以後としての表現、考えるテーブルでのレクチャー、その他インタビューや寄稿文、近著『カナリア門』での言葉と写真など、その多くを事前に触れてきましたが、そんな過去の体系的なお勉強は一切関係無く、展覧会は図太いコンセプトとシンプルで明晰な展示形式と重い写真と言葉、そして僕が勝手に想像してしまうイメージや物語が、展示空間に入ったその2時間あまり、自身の周りを亡霊のように取り囲んでいました。それはまるで宗教儀式のようでした。

つまり何が僕が言いたかったかというと、過去・現在・未来、という概念では無い空間があるということを志賀さんの展覧会で強く感じ、それは儀式であり、時間に縛られない空間が存在するんだという確信でもありました。

近年自分の興味の対象である時間への制限という主題を考えるべき大きな作品群であり、今後の創作に多いに刺激を受けました。強い作品は存在するのだと。そうやって東京へ向かう新幹線の中で1人ゆっくり頭の中で数時間前に体験した展覧会時間のひとつひとつの感触を繙いていたのが今でも鮮明に記憶に残っています。そのすべてが志賀理江子展『螺旋海岸』なんだと思います。

 

 

http://www.shutahasunuma.com/

 

 

服部円

 

マームとジプシー「あっこのはなし」

2012年12月13日[木] – 16日[日]

STスポット(http://mum-gypsy.com/next/toi-presents-6th.php)

 

数えきれないほどリフレインされる「特別ではない」言葉と汗だくになった役者たちの姿に、「刹那的な軽さ」を追求していた最近の若い方々の舞台(あくまで私見)から、一歩抜きん出たあたらしい表現が生まれつつあることを確信しました。来年(2013年)の今日マチ子さんとのコラボレーションが、いま一番の楽しみです。

 

 

編集者(http://blog.honeyee.com/mhattori/)

 

 

 

三浦丈典

 

『Georgia O’Keeffe and Her Houses』(洋書)

 

20世紀を代表する女性画家ジョージア・オキーフが生前過ごした荒野に建つ2つの家を、写真や彼女自身による絵によって紹介するのが本書です。とにかく美しい、写真も、絵も、そして時折現れるオキーフ自身も。

窓辺に佇むオキーフと、オキーフの家と、オキーフが描く家は、一瞬で世界を完結させてしまうくらいの完璧さを同じように含んでいて、だからこそ彼女自身がこの砂漠ともいえる乾いた土地から離れられないという宿命を、家を建てることによって世界に刻み込もうとしているみたい。砂嵐が吹けば跡形もなくかき消されていることを分かっていながらも。

手元に置いてあるのに、自分には絶対届かないような距離感を感じる、だからこそ毎回初めて開くような感じのする、今年出会ったとびきりの本です。

 

設計事務所スターパイロッツ代表(http://starpilots.jp/

 

 

水野大二郎

 

京都から鎌倉への引越し

 

展覧会を行ったり、シンポジウムを行ったり、本を出したりといろいろあった今年、

映画を見たり舞台公演にいったりするタイミングがほとんどありませんでした。

振り返ってみると、今年、心に残っているのは古都・京都から古都・鎌倉に引越しを

したことがもっとも心に残っています。

引越して新しい環境に移り、そこで新しい人との関係、街との関係、自然との関係を作り出す事から新しい自分を発見することができます。鎌倉に住むと海に泳ぎにいくこともできるし、新鮮な海の幸をいただくこともできます。家のすぐそばにはFabLabもあるし、いろんな職人さんたちもいます。

環境が変われば、身の回りのモノの重要度も変わります。ビーチサンダルを京都で履く必要性がなかったけれど、海岸を歩くにはどうしても必要になりました。

仕事場で「まじめに装う」ふりをするためにスニーカーを履くことが少なくなり、革靴を履くようにもなりました。移動するときに自転車用のカバンを使う頻度が下がり、肩掛けカバンを使う頻度があがりました。そうして自分と新しい環境を繋ぎなおす営みの中で、利用を通してモノに意味を与えている自分に気づかされます。

そんなことを考えていると、イヴァン・イリイチの『シャドーワーク』、ミシェル・ド・セルトー『日常的実践のポイエティーク』、ウォルター・J・オング『声の文化と文字の文化』、ウィーベ・バイカーの自転車の技術史についての論考『Social Construction of Technological Systems』、クラウス・クリッペンドルフの『意味論的転回』、そして田中浩也さん『FabLife』などが、なんとなく頭に浮かんできます。

レーザーカッターやデジタルファブリックプリンタを使って新しい洋裁のあり方を考えていることも、きっと同じ事なんでしょう。日々の生活の中の利用でどう意味を作り出す事ができるのか、ということをよく考えた1年間だったと思います。

昨今、特に注目されるようになってきたMake Movementが、日々の生活と制作の一致へと導かれていくような動きへとつながって欲しいなと思いつつ2012年の振り返りをさせていただきました。

 

慶應義塾大学環境情報学部専任講師(www.daijirom.com

 

 

矢内原美邦

 

・中国での反日デモ

・自分が混明にてアーティストインレジデンスをおこなっていたので

http://www.943studio.cn/archives/3338

 

日本がどうあるべきかを考えました。戦争をしない為にお互いの努力が必要で政府が言う強い日本が、もしくは強い中国が本当に必要か?どうなのか?という意見をスタジオトークでも中国人の皆と話しあうことができました。その時思ったのは、強い日本ではなく、考える日本であるべきだと憲法9条は絶対になくしてはいけない憲法だと強く、強く思いました。私達は、より平和を維持してゆくために芸術やアート演劇、ダンスにできることの意味を考えてゆく必要性があると考えています。日本国旗を踏みつける反日デモを間近でみてもそこに恨みはなく、この人達と文化の違いも含めてどう理解しあうか?ということを中国人アート関係者達と考えはじめるきっかけになりました。

しかしながら、今回の選挙結果をみてびっくりしています。原発再稼働、消費税10パーセント自衛権行使、憲法9条改正、官僚主導で事が進み、とにかく経済がよくなることを国民が望んでいるとは思ってもなかったので、世の中の考え方とは私がかなりずれていることに驚かされ、主婦や働くサラリーマンも原発反対って言っていましたが、いつのまにか経済がよくならないという意見にすり替わり、韓国や中国では保守派が政権をとり関係を築くか難しいと報道されており、がっかりして、これで、どう前に進めばいいのか?と落ち込みました。それでも、『私達の関係を少しずつでも築いていこう』と中国や韓国や東南アジアの友達からメールをもらい逃げないで少しずつやる気になってきました。

 

 http://www.nibroll.com

writer profile

金七 恵 (きんしち めぐみ)
1992年生まれ 後楽園⇔神楽坂他 ドリフターズ・マガジン編集長