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LAND FESディレクター松岡大 インタビュー

街をぶらりと歩きながらライブとの出会いを楽しむLAND FESの魅力について、山海塾のダンサーであり、LAND FESのディレクターの松岡大さんにお話を伺った。
 

 

 

 

 

 

 

LAND FES(http://land-jp.com)は街をぶらりと歩きながらパフォーミングアート&ミュージックのライブセッションを楽しむイベント。

 

第3回目となるLAND FES は2013年8月1~4日に「非日常へと乗り移る身体」をテーマに、西小山の街を舞台に開催された。地元のフリーペーパー「24580」との提携により、地域との連携度/密着度をさらに高め、多方面のジャンルから19組のアーティストが出演した。

 

 

 

 

樫村:今日はよろしくお願いします。まず、ダンサーでもある松岡さんがLAND FESをはじめるまでの経緯をお聞かせください。

 

松岡:僕は大学卒業後すぐに山海塾に参加したのですが、それから数年経ち、もっと自分のスタイルを磨いていきたいと考えるなかで、ソロ活動を始めました。山海塾のツアーでは、劇場で作品を上演するという形式が多いので、もう少し違った側面から空間を捉え直したいな、と思ったんです。そこで、既存の劇場やイベントスペースではない、面白い場所で自分のダンスの発表の場を見つけようとしました。

そういう活動を続けていたら、都立大学駅にある小さなフォトスタジオで、月1回のシリーズ・パフォーマンスを企画させて頂くことになったんです。最初は空間に照明を持ちこんだり、ミュージシャンとのセッションを試みたりしたのですが、結局空間上の物理的な制限が多く、やることも限られてしまうんですよね。それで3回目ぐらいから打つ手が無くなってしまったんです(笑)。そこで、半ばやけくそなんですが、外に出るしかない!と思い、自分が外に出て踊り、お客さんが2階のフォトスタジオから見下ろすスタイルでパフォーマンスをやってみました。やってみると、これが意外としっくりきたんです。道行く人との交流もあり、踊っている人(非日常)と驚いている通行人(日常)を俯瞰してお客さんが観る、そういった図式が面白いなと思いましたね。その次の回はもう少し規模を広げ、今のLAND FESのべースとなるようなかたちで、複数の会場を使い、お客さんが移動しながら観てもらう内容にしました。塾帰りの小学生に絡まれたり、警察に注意されたりもしたのですが、そういった反応も含めて、すごく面白かったんです。これをどうにかイベントにできないか、という流れで、LAND FESをはじめました。

はじめはアーティストとライブのセッションという概念はなく、会場をただ渡り歩くという発想だけだったのですが、だんだんとミュージシャンとダンサーによるセッション、そしてそこでしか観ることのできない組み合わせという付加価値をイベントに盛り込んでいきました。

 

 

樫村:LAND FESのコンセプトの「出会い」はどういった意味ですか。

 

松岡:まず「お客さんがライブに出会う」という新しい語りを提示したかったんです。なので、お客さんとそれぞれのライブセッション、パフォーマーとの「出会い」という意味があります。また、お客さんがどのようにライブを目撃するか、ライブに干渉するかを自分の体を使いながら決めることができるという意味で、自分自身の身体との「出会い」という意味合いもあります。そして今回、西小山でやってみて一番新鮮に感じたのは、街の人々との「出会い」です。

 

 

樫村:これまでのLAND FESは吉祥寺で行われていましたね。今回、西小山を舞台にしようと思ったごきっかけはなんですか。

 

松岡:西小山をベースにした「24580」というフリーペーパーがあって、プロのフォトグラファーや建築家、編集者の方々がチームを作って発行されているのですが、そのクオリティーがとても高く、みなさん西小山に愛着をもって活動されています。その方々と出会う機会に恵まれ、今年の4月にBankART  NYK ホールで行われた自分の公演(「快転」(松岡大/齋藤正和/鈴木悦久))にご招待したんです。その際に、街を舞台にしたイベントを企画しているのでよかったら西小山で一緒にやりませんか、とお話をもちかけたことが、きっかけです。第2回までの舞台だった吉祥地では、地域の方々と最初から繋がりがあるわけではなかったので、会場選びと交渉が難航しました。

ですが、今回は企画の段階から西小山の方々と一緒にやろうということで、会場選びや、商店街と話をつけることに関して、彼らが全部やってくれて、すごくスムーズに事が運びました。それにもまして、すごく良かったと思うのは、今回西小山の街の方々がこの企画を地域のお祭りのように受け止めて下さったことです。吉祥寺の際は、街の規模も大きかったため、「何かあいつら変なことをやってるな」と、人や街から切り離されてしまっていた部分もあったので、すごく進歩したなと思いました。

 

 

樫村:今回は19組のパフォーマーが参加していますね。出演者はどういった基準で決めているのですか。

 

松岡:自分の直観的な部分が多いです。あえて言葉にするなら、スタイルとしてオリジナリティがあり、個として面白いアーティスト。加えて人間性ですね。あとは、基本的にこういうことに対して理解してくれる方です。企画について、言葉だけでは伝わらないことも多く、断られるケースも多々ありました。その辺はご縁だったり相性だったりです。

 

 

 

樫村:実際の演目について話をしたいと思います。私が観にいったのは3日目の8月3日なのですが、商店街の十字路でKIUNJIさん(ダンス×パーカッション)のダンスパフォーマンスからはじまりました。一番交通の便が多く、人や車が沢山行き交う場で、あえてここからはじめるのか!と驚きました。

 

 


KIUNJI(ダンス×パーカッション)  撮影: 池谷修一

 

 

松岡:実をいうと、これは「24580」の方々の意向なんです。1日の中に組み込まれている4つのライブ全てを、室内の会場のみでやってしまうと、商店街を行き来する人々やそこに住んでいる人々にとってイベントが起きているのが分からないままになってしまいます。なので、外に出て、盛り上がっている感じを見せたいという思いがありました。室内で行うのはある意味でやりやすい部分がありますが、室外だと色々なところの許可を取らなくてはなりません。そのあたりは街の方々と塩梅よくやりました。

 

樫村:観に来て下さったお客さん以外にも、西小山の街の人々に向けたイベントというコンセプトがそもそもLAND FESにはあるんですね。

 

松岡:はい。ただ、難しいのは、公演を見に来たお客さんはお金を払っていて、そうではない通りすがりの人は無料で見ることができてしまう点です。不特定多数の人から見える部分とそうではない部分、両方をバランスよく行き来するのもまた一つの魅力なのかなと思っています。そういう点においては、今回はいろんな良い条件が揃っていたといえますね。

 

 

樫村:通りがかりの人や、車やバイクを交通整備しながら踊っていましたね。次の会場は居酒屋 「ばしゃやま亭」さんの2階にて、岩下徹さん(ダンス)と恥骨さん(ドラムス&ヴォイス)によるセッション、そしてその次に倉庫のような場所に移動しましたね。これは商店街が持っている倉庫でしょうか。

 

 


提供:LAND

松岡:そうです、商店街のイベントを行ったり、商店街の荷物や備品をおいたりしているそうです。ここでAAPAさん(ダンス)と坂之下典正さん(ギター)のセッションが行われました。

 

 

樫村:途中で倉庫のシャッターが上がり、外へと抜け出し、次の会場へと移動しながら踊っていましたね。思ってもいない場所に迷い込んでいくのが面白いかったです。

 

 

最後に、1階に魚屋さんや、マーケットが入っている昔のスーパーのような建物の屋上にダンサーの方に誘導されました。そこに広がっている景色に圧倒されました!思いもよらない廃棄場が広がっていて・・・。あれすごかったです。

 

 


蜂谷真紀(ヴォイス、TOYS)、パール・アレキサンダー(コントラバス)、石井則仁(ダンス) 撮影:池谷修一

 

 

松岡:屋上に放置されていたごちゃごちゃした廃棄物は、昔このスーパーに入っていたお店が夜逃げした時に残していった荷物らしいです。そういうストーリー、今の時代あまり聞かないじゃないですか。それが形として残っているのは西小山らしさですかね。僕らもはじめてここを見たとき震えました。

 

 

樫村:それが異空間で面白かったです。さまざまな視点からパフォーマンスをみる、新しい視点や意外な場所と出会うという体験をし、そこにLAND FESの魅力を感じました。ここでは蜂谷真紀さん(ヴォイス、TOYS)、パール・アレキサンダーさん(コントラバス)、石井則仁さん(ダンス)のセッションが行われていましたね。

 

 

以上が、8月3日の公演の演目についてです。話が変わりますが、こちら、8月1日の公演の写真をネットで見つけました。この演目では、建設途中の工事現場のブルーシートを外し、その中で演奏されていたそうですね。

 

 


飯森沙百合(ダンス)、池澤龍作(パーカッション) 撮影:田村融市郎

 

 

松岡:これはフリーペーパー「24580」に所属している建築家・加藤雅明さんの、建設途中の新しい事務所(建築事務所 m-SITE-r)を舞台として使わせてもらいました。ここでは、飯森沙百合さん(ダンス)と池澤龍作さん(パーカッション)のセッションが行われたのですが、このライブがすごく良かったです。最初、加藤さんにここを使用したいと提案した際は「よくわかんないけど、うーん…」といった感じでしたが、実際にやらせてもらったところ「こういうことやりたかったんだね、すごく面白かったよ」と言って下さったんです。何でも言ってみるものだな、と思いました(笑)。ライブの内容も良かったのですが、演出された空間になり過ぎなかったのもまたよかったのでは、と思います。

 

 

樫村:西小山でのLAND FESを終え、何か新しい発見はありましたか。

 

松岡:今回は「24580」のフリーペーパーの方々と企画を進めることができたので、地域との密着度が高まったことを肌で感じることができました。言葉でいうと簡単なことですが、やはり人との繋がりはすごく大きいなと感じました。

次回のLAND FESでは、何をやるにしても、新しい人が企画に加わることで、また違ったケミストリーが生まれるかもしれません。まだまだLAND FESは完成されたものではないので、これまでとは違った新しい息吹が生まれて、そこから何か面白いことに繋がる可能性もあると思っています。すぐに結果を出せるような種類のものではないので、良い意味でゆったり考えています。

 

 

 

 

松岡 大 http://daimatsuoka.com/

 

上智大学比較文化学科卒業。桑沢デザイン研究所卒業。

2005年より舞踏カンパニー山海塾に舞踏手として参加。

2013年に、BankART1929主催Cafe Liveにて「快転」(松岡大/齋藤正和/鈴木悦久)を上演。

街をぶらり歩きながら出会うパフォーミングアート&ミュージックのフェスティバルLAND FESを主催している。

 

LAND FES ウェブサイト http://land-jp.com

フリーペーパー「24580」ウェブサイトhttp://freepaper24580.blogspot.jp/

 

 


岩下徹(ダンス) 撮影:田村融市郎

 


三日満月(ヴィオラ&アコーディオン) 撮影:田村融市郎

 


AAPA(ダンス) 撮影:田村融市郎

 

 

writer profile

樫村有紀 (かしむら ゆき)

1993年生まれ 上智大学在学中